架空生命ストリキニン

小説、大衆音楽、芸術

'アンリの小旅行' 歌詞

 

 

 

サイレンで目を覚ます 渦を巻くブレーンフォグ

夕立を無視した今ベランダは禁忌肢だ

冷蔵庫の夜泣きに 半解凍の狐火

現実と非現実を行ったり来たり

割れたグラス片付けずに前衛的オブジェ化

青色に白抜きの左折可が強か

15時からバイトか これも無視でいいか

見下ろす街の陰から熱帯魚の群れ 誘(いざな)われ

 

光の消えた 眠る高架下

スポイトで吸って鈍色のコーヒー

溶ける水平線に舞う蛍、

誰かが打ち上げた紫

煙る街灯に 拗ねる信号機

ポケットに利己主義つめこんで

明日(あす)の鍵を 探した 

今だけは揺らぎを許して

 

雨にそっと溶けるような

忘れられた誰かの歌を歌う

浅く眠る街の憧憬に

届きそうな気がしたんだ

行く宛のない片道切符握って

自由落下 夜の小旅行

 

曖昧な日々の境界線

アスファルトに描いて

 

明日の鍵なんて どこにもないなって

告げるような剥き出しの我爱你

それでいいんだって もう好きにすればって

聞こえた気がした

空(から)の感情に 浅いアイロニー

気の抜けきった五日前のサイダー

どうせ毎日に 意味などないけど

追いかけてたいんだ

 

眩んだ視界なら目を閉じればいい

暗闇なら前に進まなければいい

未来はグレー 白も黒もない

だからどこにも行けない これが正体

どうしたって未来は捕まえられやしない

午前三時の深海に漂っていたい

報われない自分にただ酔っていたい

だからそんな過去のことは どうか、

 

穴の空いた傘みたいな夜にだって縋ってたいんだ

目をつむって息を殺して

空っぽな気がしたって 掛け違いの毎日を繋いで

それでも意味はあるって叫びたくて

 

遥か遠く先の未来で この今を思い出したいだけ

空を仰いで息を吸い込んで、

どこにだって行けるはずだ

行く宛もなく彷徨うことこそが僕にとって呼吸だから

 

夜が光に塗りつぶされてしまう前に

たったひとつの答えを、それを探している