架空生命ストリキニン

小説、大衆音楽、芸術

2020/06/29 感想

 

書肆侃侃房
発売日 : 2020-04-29

 

 

前回からかなり間が空いてしまった。読書のモチベが突然切れることって誰にでもあることだと思うのだけど、飽き性だからモチベのリスポーンが遅い。前回の本を読み終わってから、しばらく読む気が起きなくて、今回も、ブログに書くんだし、と無理やり重い腰をあげて読み始めた。

エッセイ集なんだけど、存外面白くて、いや存外というのは失礼だな、小説とかって読んでる途中なのに飽きちゃうことがあるんだけど、短いエッセイ集はそれが起こらない。(小説を読むのに向いてないなと思うことがある。頭がわるいのか先天的に小説に向いてないだけなのか) それで最近はエッセイみたいなのしか読まない。小説を読まなければ何かが腐っていく気がしていて、そろそろ読まなきゃなーとか考えながらスマホをいじってYoutube見て先送りをしている。

素敵だな、と思うところはいろいろあるんだけど、いかんせん全て現実に起こっていることらしいので、見習おうとかこれは学べるとかがない。内容に言及するのも違う気がするので、比喩の話を少しだけ。当たり前なんだけど比喩って難しいのだよな。それは比喩の性質的に人との共感を集める目的のそれに他ならないからというのがひとつ、結局こういうのは感性が全てで、比喩を書こうとするときにどれだけ感じることを怠らずに生きてきたかが如実にあらわれてしまうというのがもうひとつ。あと、比喩って教科書通りのものを書きすぎてもダメで、かといって奇を衒いすぎても押しつけがましくなっちゃってよろしくない。比喩を書くのに一時期はまっていたタイミングがあって(透明のプリズムあたり?)、でも書いてるうちに「なんだかよくないほうの嘘をついてる気分だな」という気持ちが堆積してしまうのだよな。どうしても。嘘をつかないと、誇張しないと比喩が書けないって、感性が足りないのかもね。

このエッセイに載ってる比喩はどれもなんだか絶妙で面白い。勝手に「印象に残った比喩ランキング」をやるんだけど、ちょっと以下の空欄に入る言葉を考えてみてくれないか。

 

 

 

驚いてあたりを見回すと、低めの桜の木に男子がふたり肩車をして手を伸ばしていた。どっしりとしたでかい男の子の上に、ひょろっとした眼鏡が肩車されて腕を一生懸命伸ばしている。[  *空欄*  ] を圧縮してふたりにしたようなその見た目に思わず足を止めてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答えは「ズッコケ3人組を圧縮してふたりにしたようなその見た目」なんだけど、初見でこれをみたとき、誇張じゃなく本当に声を上げて笑ってしまった。「ズッコケ3人組を圧縮してふたりにしたようなその見た目」て。どこの誰がいつどうやって何のためにズッコケ3人組を圧縮してふたりにしようとするんだよ。それでいて超的確な比喩なので心の中にジャストフィットするからすごい。まあ、こんな感じの思わずくすりとくる比喩の感性で現実の出来事が彩り豊かに綴られている。いいエッセイだったな。

次は積読の小説を読みます。よろしく