架空生命ストリキニン

小説、大衆音楽、芸術

2020/06/20 感想2

 

著者 : 最果タヒ
大和書房
発売日 : 2020-03-15

 

小説ではなくエッセイ。間違えて買ったとかではなく、ふと、なんとはなしに他人の価値観に触れてみたいと思って手にとっている。他人の価値観に触れるのに最適の方法は小説を読むことだなんて嘯いて、その実そうでもないものが多かったりする。インディーズバンドを聴くのは一方のこと間違ってはいない。と、思う。

わかることとわからないこと。ひとつには時代背景があるのだろうけど、それはそれとして、これは自分も考えていたことだなと共感するところ、これはいまいちわからないなと思うところのふたつ。コンプレックスなんて抱えていないほうがおかしくて、だから、もともと心の底に芽を出していた価値観や感情に気づかせてくれる。前者はそうで、わからなかったものは、そもそもそんなの存在しなかったのだ、自分の中には。

たとえば、好きだと思う感情を高尚なものにしたくて、というか自分がそれを好きでいることを認められたくて、ひいては自分自身を認められたいと願って、本物とか偽物とかそういう言葉を使ってしまう。コンプレックス。分かる。そういう人間はあまた、そのあたりをほっつき歩いているし、自分もそう。目の肥えた大人のふりをして、自分自身が認められたいと願う。そんな人間ばかりだ。だから、普遍性。もとい、共感。作者がそう思っていることが大事なのではない。そんな人間、つまり狢がたくさんいるということ、その事実に救われたり、救われない気持ちになったり。でも、そういうものでしょう。

 

この前本屋で仕入れた最後の一冊が残っているのでそれを読む。すると次に読むのはどれにしようか? 今から大垣書店に向かうので、良さげなものがあれば。