架空生命ストリキニン

小説、大衆音楽、芸術

2020/06/14 感想

 

著者 : 川上弘美
発売日 : 2019-11-07

 

26個ぐらいの掌編がずらっと並んだ短編集。"このあたり"で起こる、不可解な、でもあり得たりするかもしれないようなそうでもないような、そんなお話がたくさん載っている。教訓とか抑揚とか、そういう押し付けがましい暗黙のルールみたいなものが一切混ざりこんでいなくて、そういうところがこういうアンリアルをほんのわずかにリアルな側に仕立てあげている。公園の子供がずけずけ家に上がり込んで住み着いたり、誰も来ないスナックを経営する人がいたり、公園の東屋に住む人、幽霊と旅行に出る人、影が二重にある人、それだけならまだしも、鳩っぽくなる病気が流行る、街の治安が終わって地下シェルターで住む人しかいなくなる、政府が転覆する。つまりあり得なくて、でもそれが淡々と描かれすぎているせいで、本当にこういう街もあるのかな、と思ったり思わなかったり。

一作が本当に短く、集中力の切断が多い自分にはストレスなしで読めた。次も短い本を読みたいな。明日本屋に行って良い本が見つかったらそれを読む。見つからなければ、千早茜という作家の『さんかく』という本を読みます。名前の通り、三角関係を扱っている本です。